- 投稿 2017/06/12
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こんにちは。今日も私の記事を訪問してくださりありがとうございます。
さて、湾岸アラブ世界というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか?
アラブ・イスラム世界というと、サダム・フセインやカダフィのように恐怖政治を敷く独裁者や、無差別テロを行うアルカイダやイスラム国のように、何かとネガティブなイメージがつきまといます。恐らく、イラク、シリア、リビアのような破綻した紛争国家のイメージが強いかと思います。
しかし、世界全体で12億人のイスラム人口がいるように、イスラム世界は国や地域によって多様であり、近代化とイスラム伝統文化を混在しつつ、穏健で平和な国造りに成功している国もたくさんあります。湾岸アラブ世界のクウェートやバーレーンは、そのような比較的成功した国々の部類に入ると言えます。
というわけで今回は、ネガティブイメージとは違った、イスラムが魅力的に活用された国に関心をお持ちで、なおかつ実際にそうした世界を体感してみたい方向けに、石油による近代化とイスラム伝統文化の両立し、大型ショッピングモールと魚市場とダウ船が混在する都市であるクウェートの首都クウェートシティについての記事を書かせて頂きます。
目次
石油の富を背景とした商業の近代化と大型ショッピングモール
1938年2月に自国内で初の油田が発見されたことで、クウェートの主力の産業は石油産業がそれまでの天然真珠産業に取って代わり、石油の富を背景にした近代化と経済発展が急速に進みました。
ペルシャ湾の一番奥まった場所にあるクウェートでは、バスラとメッカの間の貿易と巡礼の中継地という好条件を利用してイギリスの保護国時代から長年商業を営んできましたが、その商業も石油の発見によって近代化と発展が進み、クウェート国内に大型ショッピングモールが次々に建設されるほどの発展につながりました。
クウェートシティを代表するスーク・シャルク・ショッピングモール
クウェートに限らず、湾岸アラブ諸国の特徴は高層ビル群とモスクの混在に見られるように、伝統文化を維持しつつ石油の富の力で独自の近代化を遂げたことですが、その近代化の象徴と言えるものが大型ショッピングモールです。
市内中心部から徒歩で15分程度行った海岸沿い通りにあるスーク・シャルクも、そんなクウェートシティを代表する大型ショッピングモールの1つです。
海岸沿い通りにある大型ショッピングモール、スーク・シャルクの入口です。
正面入口から入ったスーク・シャルクの内部は以下のような感じです。
入口をはいってすぐの大広間にある、砂時計?にもよく似た形状の巨大な装飾品。青と紫の混じったカラフルな色使いが、湾岸アラブ世界のモスクと同じく、イスラム様式独特の色彩を放っています。
1階に並んだモール内の店舗群。シンガポールや香港のショッピングモールの店舗群と殆ど変わらない光景です。
2階から見た光景。こんな具合に2階建てのビルの中に多数の店舗があり、レストランもあります。
2階にあるレストラン。スターバックスのようなコーヒーショップや、マクドナルドのようなファーストフード店など、様々な飲食店がモールの2階にはあります。
アイスクリーム店としておなじみのサーティワンもあり。有名な店名がアラビア語で書かれているのがなんとも不思議な気がします。
モールの2階にあるゲームセンター。親子連れで来ている人たちがたくさんいます。
モールの2階には映画館もあります。映画館名には英語とアラビア語が併記されています。
一見、シンガポールや香港の大型ショッピングモールと雰囲気は殆ど変わらないですが、店名がアラビア語で書かれていて、お客さんがイスラムの民族衣装であるのを見ると、やはりここは湾岸アラブ諸国なのだと気づきます。
石油発見以前からの伝統的な雰囲気の強い魚市場
石油の恩恵を背景にした、湾岸アラブ諸国の近代化の象徴とも言える大型ショッピングモールですが、このショッピングモールのすぐ隣には、いかにも石油発見以前からの伝統的なものを思わせる、魚市場があります。
魚市場の建物自体は近代的な外観ですが、内部の市場の様子は古くからの伝統的な光景そのものでした。伝統な魚市場の後ろに高層ビルが建っているのは、いかにも独自の発展を遂げた湾岸アラブ諸国の1つであるクウェートらしいところです。
魚市場の内部は以下のような感じです。
中流以上の階層の人たちのためのショッピングモール内とは違い、いかにも低所得層の人たちのための生活のための場と言う雰囲気の魚市場です。建物内のデザインも絵柄もそうですが、いかにも湾岸アラブで石油の発見よりも昔からありそうな光景です。
なお、建物内は魚市場がメインではありますが、野菜や果物、雑貨品なども市場で売られています。
魚市場と同様、いかにも石油以前の時代から受け継がれてきた伝統的な雰囲気が強い市場です。
近代的なボートやフェリーと伝統的なダウ船
高層ビル群とモスク、大型ショッピングモールと魚市場に見られる近代化と伝統文化の混在の要素は、スーク・シャルクと魚市場の傍にあるそれぞれの港に停泊中の船の姿からも読み取れます。
スーク・シャルク前の港の護岸には、近代的なボートやフェリーが多数停泊しています。
停泊しているボートやフェリーの姿自体は欧米や日本のものと殆ど変わらないですが、多数の船舶がショッピングモールの目の前にある港に停泊しているという光景は、湾岸アラブ諸国ならではと言えます。
一方、魚市場の横にも港がありますが、こちらの港の護岸にはスーク・シャルクの横の港にある近代的なボートやフェリーと違い、停泊しているのは伝統的な木造のダウ船が殆どです。
船の雰囲気がまるで違うだけでなく、港の水もスーク・シャルクの横の綺麗な水面に比べると、こちらは水面にゴミが散らかっていて小汚い印象を受けます。
なおかつ、こちらのダウ船では、陸上に自宅を持たず、船を住居として生活している人が多数いることが見て取れます。
こんな具合に高層ビル群の中に役割を終えたダウ船が展示されているのも湾岸アラブのクウェートならではと言えます。
クウェート国内に存在する市民と低所得層の大きな格差
同じ都市の中で雰囲気の違いが見られる、特に近代的なボートやフェリーと伝統的なダウ船が隣接する港で共に見られるというのは、それだけクウェート国内に大きな格差が存在するということでもあります。
高級住宅に住み、教育や医療を無償で受けられ、あまり仕事をしないクウェート市民と、同じアラブ人でありながらクウェート市民から差別され、陸上に自宅を持たずにダウ船を自宅代わりにして生活する低所得層の人たちといった具合に、国内に大きな格差を抱えているのはクウェートや湾岸アラブ諸国の残念な特徴の1つでもあります。
穏健で平和な国の魅力を維持しつつクウェートが発展し続けることを
世界有数の石油生産量と石油埋蔵量を誇るクウェートでは、産業の多角化があまり図られておらず、これからも外国人労働者と石油に依存した経済が続き、経済・産業改革に向けて現政府は難しい舵取りを続けていくことになりそうです。
それでも恐怖政治にも無差別テロの恐怖にも汚染されていない、穏健で平和で豊かな国であることがクウェートの最大の魅力なので、この魅力はこれからも保持し続け、より良い方向にクウェートには発展と変遷を遂げていってほしいものです。
クウェートシティの見所の各種情報
入場料
スーク・シャルク、魚市場ともに入場料自体は無料。必要な金額は購入する商品次第。
開園時間
スーク・シャルクの開園時間はそれぞれ、ショップが10時~22時、レストランが10時~24時、映画館が10時半~24時(金曜日は14時~24時)。無休。
アクセス
クウェート国際空港からクウェートシティ中心部まではタクシーで約20分程度。タクシー代は片道でKD8~10程度。
クウェートシティ中心部からスーク・シャルクには徒歩で15分程度。
周辺地図(スーク・シャルク)
(参考に)クウェートの各種情報
航空券
日本からの直行便はありません。東京(羽田or成田)からだとアブダビ、ドバイ、ドーハ、イスタンブール等の経由便があり、乗継地までは約12時間、そこからクウェートまで1~2時間程度の移動となるため、乗継の待ち時間を含めて約20時間かかります。
航空会社はカタール航空、エミレーツ航空、エティハド航空、ターキッシュエアラインズなど。
航空運賃は12万円~14万円が目安ですが、GW休暇や盆休みなどの連休や、航空会社の時間帯によって航空運賃が18万円近くまで跳ね上がることもあるのでご注意。
詳しくは、HISやスカイチケット、エクスペディアなどで航空券の検索を。
海外旅行はエイチ・アイ・エス
空港でのビザ取得
3か月間有効の滞在ビザが、入国時に空港で取得できます。費用はKD3。クレジットカードでの支払いはできません。到着ロビーのカウンター付近の銀行でKDに両替した後、申請用紙に名前などの必要事項を記入します。
ビザ取得用の印紙を自身で自販機で購入し、すぐ傍にあるコピー機でパスポートの顔写真入りのページをコピーして、必要事項を記入した申請用紙およびパスポートの原本と共に、カウンターに提出してビザを取得します。申請時には、パスポートに見開き2ページ以上余白が残っていることが必要になります。
なお、KDの現金がなければ自販機で印紙を購入できないため、入国時にはカウンターのすぐ近くにある空港銀行で両替してもらう必要があります。その際の注意事項については、本ページ下部の「クウェート滞在時の諸注意」に関する関連記事をご参照ください。
言語
公用語はアラビア語ですが、英語の通用度は非常に高く、バスやタクシー、レストラン、博物館でも普通に英語が通じます。交通標識や案内掲示板などにもアラビア語と英語が必ず併記されているため、英語が話せれば不自由に感じることはありません。
通貨
通貨単位はクウェート・ディナールとフィルス。現地表記はKDおよびFils。KD1が1000Filsおよび約370円程度に相当します。
時差
日本よりマイナス6時間。
宿泊施設
クウェートにはゲストハウスやエコノミーホテルのように安価な宿泊施設はありません。宿泊施設はビジネスホテルのレベルのものからで、最低でも7000円/泊はかかります。
その一方で、物価が高いクウェートシティ中心部でも10000円/泊未満で宿泊できるビジネスホテルは多数あり、そこそこ設備も整っていて周囲の騒音もさほどないため、わざわざ高級ホテルに宿泊する必要はありません。
ホテルの条件(Wi-Fi、冷蔵庫、エアコン、目的地へのアクセス、朝食の有無等)をよくご確認ください。特に、クウェートは常夏の国で、冬でも最低温度が25℃にはなるため、エアコンと冷蔵庫は必須と言えます。観光地としての知名度があまり高くない国なので、夏季や冬季の長期休暇でもそれ以外の日程でも、宿泊費はそれほど大きくは変わりません。
詳しくはエクスペディアやBooking.com、トリップアドバイザー等で検索を。
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海外ホテル検索、Booking.com
TripAdvisor (トリップアドバイザー)
関連記事
クウェート滞在時の各種諸注意
イスラム教国であるクウェートでは、欧米や東南アジアなどに比べるとイスラム教の戒律故の様々な制約があります。王族やモスクでの礼拝、女性の旅、アルコールとたばこ、写真撮影など、クウェートでの滞在時における各種諸注意については、下記記事に詳しく記載してありますのでご参照ください。
湾岸アラブ諸国の近代都市の関連記事
石油の富を背景にして近代化を遂げつつ、石油の発見以前からのイスラム伝統文化も混在させている湾岸アラブ諸国の都市の光景に関しては、下記記事を併せてご参照ください。
- 湾岸アラブの近代化と伝統文化が混在する世界―クウェートの大型ショッピングモールと魚市場とダウ船から読み解く
- 湾岸アラブの近代化と伝統文化が混在する世界―クウェートの高層ビル群とモスクから読み解く
- 湾岸アラブの近代化と伝統文化が混在する世界―バーレーンの高層ビル群と旧市街の市場通りから読み解く
湾岸戦争に関わる見所の関連記事
クウェートが湾岸戦争時にイラクの侵攻で受けた破壊の爪痕や、破壊されつつも現在は見事に復旧され人々の憩いの場になっている見所については、下記記事をご参照ください。
湾岸アラブと石油の歴史の関連記事
それぞれの湾岸アラブ諸国で石油がいつ頃、当時のどのような社会事情を背景にして発見されたのか、石油の発見にはどのような人物や会社が関わったのかの歴史考察については、下記記事を併せてご参照ください。
湾岸戦争の歴史的経緯の関連記事
湾岸戦争がなぜイラクに侵攻されることになり、戦時下のクウェートでどのような事態が生じたのか、その歴史的経緯については、下記記事をご参照ください。
- 湾岸戦争の歴史考察―米国主導の多国籍軍の介入で10万人のイラク人が犠牲に
- 湾岸戦争の歴史考察―イラクのクウェート侵攻と戦前日本の太平洋戦争の類似点
- 湾岸戦争の歴史考察―なぜクウェートはイラクの恨みを買ったのか