湾岸アラブの近代化と伝統文化が混在する世界―クウェートの高層ビル群とモスクから読み解く

こんにちは。今日も私の記事を訪問してくださりありがとうございます。

 

さて、湾岸アラブ世界というと、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

 

アラブ・イスラム世界というと、サダム・フセインやカダフィのように恐怖政治を敷く独裁者や、無差別テロを行うアルカイダやイスラム国のように、何かとネガティブなイメージがつきまといます。恐らく、イラク、シリア、リビアのような破綻した紛争国家のイメージが強いかと思います。

 

しかし、世界全体で12億人のイスラム人口がいるように、イスラム世界は国や地域によって多様であり、近代化とイスラム伝統文化を混在しつつ、穏健で平和な国造りに成功している国もたくさんあります。湾岸アラブ世界のクウェートやバーレーンは、そのような比較的成功した国々の部類に入ると言えます。

 

というわけで今回は、ネガティブイメージとは違った、イスラムが魅力的に活用された国に関心をお持ちで、なおかつ実際にそうした世界を体感してみたい方向けに、石油による近代化とイスラム伝統文化の両立し、高層ビル群とモスクが混在する都市である、クウェートの首都クウェートシティについての記事を書かせて頂きます。

 

 

石油の発見で急速な近代化を遂げたクウェート

 

クウェートで石油が発見されたのは1938年2月、湾岸アラブ諸国で初めて石油が発見したバーレーンよりも6年遅れてのことになります。

 

石油の発見以前には、イスラムの二大聖地であるバスラとメッカの貿易と巡礼の中継地という特性を最大限に利用し、天然真珠を始めとする商業都市としてサバーハ王家の下でそれなりに栄えていたクウェートですが、石油の発見に伴う経済・産業体制の転換によってクウェートでは急速な近代化と発展を遂げることになりました。

 

 

経済発展と平和の象徴であるクウェートシティの解放タワー

 

クウェートシティの中心部には、そんなクウェートの経済発展の象徴である、解放タワーが建てられています。

 


市内中心部よりも少し離れた海岸沿いにあるクウェートタワーと同様、解放タワーはクウェートシティの発展の象徴とされています。

 

クウェートタワーが一番高いものでも187mしかないのに対し、この解放タワーは372mありますので、こちらの方がクウェートの発展の象徴としての地位は高いと言えそうです。

 

クウェートシティのもう1つの象徴である、海岸沿い通りに建つクウェートタワー。

 

解放タワーもクウェートタワーと同様、湾岸戦争より前に建設が開始され、戦争とともに工事が中断し、イラク軍撤退後に工事再開、1996年に完工しました。国営通信会社の建物であることから、元々はクウェート・テレコミュニケーションズ・タワーと名付けられる予定でしたが、イラクからのクウェート解放を記念して、解放タワーに名前を変更されました。

 

クウェートタワーと同様、解放タワーは経済発展の象徴であるだけでなく、湾岸戦争後のクウェートの平和の象徴とも言えるシンボルタワーです。

 

国営通信会社の建物である解放タワーの横に大型モスクが隣接しているのは、いかにも湾岸アラブ諸国の1つであるクウェートらしいところです。

 

 

クウェートシティの象徴である証券取引所とグランドモスク

 

解放タワーに限らず、高層ビルとモスクが混在する光景がクウェートシティにあちこちに見られ、その最も象徴的な例が、証券取引所とグランドモスクになります。

 

こちらはやはり市内中心部にある証券取引所。石油の富を背景に金融都市化を政策として進めるクウェートシティの象徴と言えます。

 

 

 

証券取引所のすぐ傍には、クウェートシティ最大の規模を誇るグランドモスクがあります。中央のドームの直径は約26m、高さは約43mもあります。

 

こんな具合に、金融都市の象徴である証券取引所のすぐ傍にグランドモスクがあるのは、いかにもクウェートを始めとする湾岸アラブ諸国ならではと言えます。

 

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林立する高層ビル群とモスクが混在するクウェートシティ

 

石油の力を背景にした近代化と経済発展の恩恵で、市内中心部、特に解放タワーの周りには高層ビル群が林立し、車両の通行量もかなり多いです。

 

新しい高層ビルも次々に建設されています。石油による富の恩恵は計り知れないものがありそうです。

 

その一方で、先の証券取引所と同様、高層ビル群の中に溶け込むかのように、多数のモスクが建てられています。

 

こちらは、やはり市内中心部の別の場所にある高層ビルとモスクを、夕闇が増してきた頃に撮影したものです。

 

こんな感じで、近代的な建物とイスラム伝統的な建物が共存しているのは、欧米やアジア諸国の光景にはあまり見られない、イスラムを国教に掲げる湾岸アラブ諸国ならではです。

 

市内中心部から少し離れた海岸沿い通りにもまた、高層ビル群とモスクが両立した光景が多々見られます。

 

まず、以下は大型ショッピングモールの傍の通りの光景です。

 

 

 

 

こんな感じで高層ビル群の中にモスクが全く違和感なく溶け込んでいます。

 

大型ショッピングモールから徒歩で10分ほど行った場所には、シティバンクのクウェートシティ支店があります。

 

 

シティバンクのビルのすぐ傍にも、やはりモスクたちがまるでシティバンクと一緒に親子のように立ち並んでいます。

 

シティバンクから見てモスクから反対側には、新たに建設途中の大型建築があります。

 

そしてその建設中の大型建築の向こうには、高層マンションが立ち並び、そのさらに向こうにはクウェートタワーがそびえるように建っています。

 

高層ビル群だけを見ると、規模こそ小さいものの市内中心部は東京や香港やシンガポールと変わらない光景に一見すると見えますが、その中にあるモスクたち、そしてシンボルである解放タワーやクウェートタワーを見ると、やはりここは湾岸アラブの国なのだと気が付きます。

 

 

各都市の街並みの違いから見るクウェート国内の大きな格差

 

高層ビル群とモスクが混在するクウェートシティの光景に見られるように、欧米とは違う独自の発展を遂げたクウェート。しかし首都であるクウェートシティにこそ高層ビル群が見られるものの、アルクレインやフィンタスなどの地方都市では高層ビルは殆ど見られず、街並みは全く異なります。

 

人通りが少なく閑散とし、小規模な家々が林立する、アルクレインの住宅街の街並み。

 

同じ国内で都市によって街並みに顕著な違いが見られるというのは、それだけ国内に大きな格差が存在するということでもあります。

 

石油の富を背景に、クウェート国籍の市民は教育や医療を無償で受けられ、あまり仕事をしない。一方で労働力不足を補うために海外から来た労働者たちは、同じアラブ人でありながらクウェート市民から差別されているといった問題もあります。

 

 

穏健で平和な国の魅力をクウェートには維持し続けてほしい

 

世界有数の石油生産量と石油埋蔵量を誇るクウェートでは、産業の多角化があまり図られてはいません。これからも石油に依存した経済が続き、外国人労働者や無国籍アラブ人とクウェート市民の間で、現政府は難しい舵取りを続けることになりそうです。

 

とは言え、恐怖政治にも無差別テロの恐怖にも汚染されずに、平和で豊かな国をイスラム世界でも築く道はあるのだということを、クウェートの光景は教えてくれます。国民議会を発展させた穏健な王政の下、平和で豊かであることがこの国の最大の魅力なので、この魅力はこれからも保持し続け、クウェートにはより良い方向に発展と変遷を遂げていってほしいものです。

 

 

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クウェートシティの見所の各種情報

 

入場料

 

グランドモスクは入場料無料。解放タワーや証券取引所は一般観光客の立入不可。

 

 

開園時間

 

グランドモスクでは、英語ツアーが9時および17時の2回催行されており、所要約1時間半~2時間。無休。

アブドゥラ・アル・アハメド・ストリートに面した入口でツアーを申し込み、敷地内の待合室で待機後、ガイドの案内と指示に従いツアーに参加。女性の方は服の上からアバーヤの着用が必須。

解放タワーや証券取引所は一般観光客の立入不可。

 

 

アクセス

 

クウェート国際空港からクウェートシティ中心部まではタクシーで約20分程度。タクシー代は片道でKD8~10程度。

 

 

周辺地図(解放タワー)

 

 

 

周辺地図(グランドモスク)

 

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(参考に)クウェートの各種情報

 

航空券

 

日本からの直行便はありません。東京(羽田or成田)からだとアブダビ、ドバイ、ドーハ、イスタンブール等の経由便があり、乗継地までは約12時間、そこからクウェートまで1~2時間程度の移動となるため、乗継の待ち時間を含めて約20時間かかります。

航空会社はカタール航空、エミレーツ航空、エティハド航空、ターキッシュエアラインズなど。

 

航空運賃は12万円~14万円が目安ですが、GW休暇や盆休みなどの連休や、航空会社の時間帯によって航空運賃が18万円近くまで跳ね上がることもあるのでご注意。

 

詳しくは、HISやスカイチケット、エクスペディアなどで航空券の検索を。
海外旅行はエイチ・アイ・エス

海外格安航空券を探すなら スカイチケット!

【航空券+ホテル】海外旅行エクスペディア★パッケージツアー

 

 

空港でのビザ取得

 

3か月間有効の滞在ビザが、入国時に空港で取得できます。費用はKD3。クレジットカードでの支払いはできません。到着ロビーのカウンター付近の銀行でKDに両替した後、申請用紙に名前などの必要事項を記入します。

 

ビザ取得用の印紙を自身で自販機で購入し、すぐ傍にあるコピー機でパスポートの顔写真入りのページをコピーして、必要事項を記入した申請用紙およびパスポートの原本と共に、カウンターに提出してビザを取得します。申請時には、パスポートに見開き2ページ以上余白が残っていることが必要になります。

 

なお、KDの現金がなければ自販機で印紙を購入できないため、入国時にはカウンターのすぐ近くにある空港銀行で両替してもらう必要があります。その際の注意事項については、本ページ下部の「クウェート滞在時の諸注意」に関する関連記事をご参照ください。

 

 

言語

 

公用語はアラビア語ですが、英語の通用度は非常に高く、バスやタクシー、レストラン、博物館でも普通に英語が通じます。交通標識や案内掲示板などにもアラビア語と英語が必ず併記されているため、英語が話せれば不自由に感じることはありません。

 

 

通貨

 

通貨単位はクウェート・ディナールとフィルス。現地表記はKDおよびFils。KD1が1000Filsおよび約370円程度に相当します。

 

 

時差

 

日本よりマイナス6時間。

 

 

宿泊施設

 

クウェートにはゲストハウスやエコノミーホテルのように安価な宿泊施設はありません。宿泊施設はビジネスホテルのレベルのものからで、最低でも7000円/泊はかかります。

 

その一方で、物価が高いクウェートシティ中心部でも10000円/泊未満で宿泊できるビジネスホテルは多数あり、そこそこ設備も整っていて周囲の騒音もさほどないため、わざわざ高級ホテルに宿泊する必要はありません。

 

ホテルの条件(Wi-Fi、冷蔵庫、エアコン、目的地へのアクセス、朝食の有無等)をよくご確認ください。特に、クウェートは常夏の国で、冬でも最低温度が25℃にはなるため、エアコンと冷蔵庫は必須と言えます。観光地としての知名度があまり高くない国なので、夏季や冬季の長期休暇でもそれ以外の日程でも、宿泊費はそれほど大きくは変わりません。

 

詳しくはエクスペディアやBooking.com、トリップアドバイザー等で検索を。
リアルタイム空室確認が分かりやすい!エクスペディアの海外ホテル
海外ホテル検索、Booking.com
TripAdvisor (トリップアドバイザー)

 

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クウェート滞在時の各種諸注意

 

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石油の富を背景にして近代化を遂げつつ、石油の発見以前からのイスラム伝統文化も混在させている湾岸アラブ諸国の都市の光景に関しては、下記記事を併せてご参照ください。

 

 

 

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