こんばんは。今日も私の記事を訪問してくださりありがとうございます。
イスラム教国であるクウェートでは、欧米や東南アジアなどに比べるとイスラム教の戒律故に様々な制約があります。今回の記事では、ご旅行やご出張でクウェートに滞在される方向けに、クウェート滞在時の注意事項を何点か記載させて頂きます。
目次
礼拝と王族に関わる諸注意と禁止事項
イスラム教国のクウェートでは、グランドモスクなどの一部のモスクを除いて、モスクや宗教施設への一般観光客や異教徒への立入は禁止されています。テロに遭うことがなくても、何らかのトラブルの元になりますので、モスクに近づいたり立ち寄ったりすることは極力さけるようにしてください。
グランドモスクのように一般観光客にオープンなモスクでは、ガイドの方の指示を守り、服装(男性の短パンやランニングシャツは不可、女性は服の上に必ずアバーヤを着用)などのルールやマナーを守り、モスクに来訪されているムスリムの方に迷惑がかからないよう配慮しながら見学してください。
一般観光客にオープンにされている、クウェート最大規模を誇るグランドモスク。
モスクでの礼拝の最中に、人前を横切る、敷物を踏む、写真を撮る、話しかけることなどは絶対にタブーですので慎んでください。
さらに、アラブの友好国も含めて、クウェートの国家元首や王族を批判することは違法であり禁止されています。通報されれば罰則や罰金が課され、ごくごく稀ですが、最悪は投獄もあり得ますので、こちらも軽率な言動をしないよう慎んでください。
断食月(ラマダン)時の諸注意
断食月(ラマダン)の期間中は、太陽が出ている間に人前で飲食すること、ましてたばこを吸うことは絶対にタブーになります。
法律で禁止されているわけではなく、罰金や罰則があるわけではありませんが、現地の人たちが日中に水一滴も飲めない状態で働いている面前で、あからさまに飲食したりすれば間違いなくトラブルの元になりますので、絶対にやめるようにしてください。
ラマダン中は水一滴すら現地の人たちは飲食をせず、にもかかわらず通勤は通常通りこなさなければならないため、脱水症状に陥る人が多く、そのような状態で車両を運転する人が多いので、交通事故が多発する傾向にあります。現地でラマダン時に車両で移動される際には、交通事故に遭わないようにくれぐれもご注意ください。
クウェートを始めとするイスラムの国々では、太陰暦であるイスラム歴を活用しており、年間11日ずつ太陽暦に対してずれが生じるため、ラマダンもその年によって夏季だったり冬季だったりします。
ご渡航される時期がラマダンに当たらず、現地での飲食に支障がないかどうか、事前に確認し、夏季のラマダン時にご滞在されるときは、脱水症状を起こさないよう、太陽が出ていない早朝と夜間には食事と水分を十分に補給するようにしてください。
クウェートシティの大型ショッピングモール内のレストランとファーストフード店。このように日中に大勢の人が食事していればラマダンではなく、人前での飲食には全く問題ありません。
出入国時および銀行での諸注意
クウェートの入国時には、空港でのビザ取得が必要ですが、収入印紙の購入にKDの現金が必要であるため、到着時に銀行での両替がすぐに必要になります。しかし空港銀行では日本円は交換してもらえず、基本的には米ドルかユーロしかKDに交換してもらえません。
逆に出国時に空港銀行でKDを米ドルかユーロに交換してもらおうとすると、空港銀行では100米ドルもしくは100ユーロの紙幣しか持ち合わせはないと言われ、それで交換できない分のKDは手元に残されることになります。
クウェートに渡航される際には、予め日本もしくは経由国で日本円を米ドルかユーロに交換して持参し、一方でクウェートから出国される際には、現地でKDを可能な限り使い切る、もしもKDが余ったら、空港に行く前に市内のシティバンク銀行などでKDを米ドルやユーロに交換されるようにしてください。
市内の銀行でも日本円の交換はできない銀行が多いので、その点も併せてご留意ください。
首都クウェートシティにあるシティバンク銀行。
アルコールとたばこ
アルコールの消費は違法であり、高級ホテルでも飲むことはできず、たとえ空港の免税店で購入した酒であっても国内への持ち込みは禁止されています。また、航空会社の中にはクウェート航空のように、乗客の飲酒でさえも禁止している航空会社もあります。
たばこは、レストランや公共の場での喫煙は禁止されていますが、ホテルは喫煙ルームが設けられているホテルが多いです。街中でクウェート人たちがたばこを吸っている姿を見かけることは多いのですが、絶対に真似はしないでください。
女性の方への諸注意(犯罪被害に遭わないために)
女性の方は、外出の際には、肩やひざを隠し、肌の露出はできる限り控えてください。タクシーでは助手席には乗らず、後部座席に乗るようにしてください。バス内では、男性専用の座席と、女性や子供専用の座席が分かれているので、バスに乗車時には女性専用の座席の位置を確認してから着席するようにしてください。
違法ではありませんが、安食堂はたいてい男性しかおらず雰囲気的に利用しづらいので、ファミリールームのあるレストランを利用するのが無難です。
また、クウェートでは、出稼ぎ労働で滞在しているアジア人女性やアフリカ人女性が性犯罪の被害に遭う事件が報告されており、独身女性のナンパを目的としたイタズラ電話や勧誘も多数報告されています。
もちろんそれほど頻繁に被害が生じるわけではもちろんありませんが、治安の良くない場所や日が暮れてからの女性の一人歩きはやめる、露出の多い服装は避けるなど、しっかりと対策を立て、くれぐれもご注意ください。
なおかつ、日本人女性はハッキリと「ノー」を言わないと思われがちなので、嫌なことは嫌だと、きちんと意思表示をするようにしてください。
立入禁止施設
宮殿や警察、軍施設、石油施設、国境付近などへの立入は禁止されています。また、一般観光客や異教徒の立入を禁止しているモスクが多く、地方都市ではテロや犯罪に巻き込まれているモスクもあるため、首都のグランドモスクのように、一般観光客向けにオープンしていることが明らかでないモスクには、立入は避ける方が無難です。
立入禁止施設でなくても、犯罪やテロに遭遇しやすそうな場所、治安の良くなさそうな場所には、極力近寄らないようにしてください。また、人通りの多い首都の大通りなどであればともかく、人通りの少なく狙われやすい場所には、日没後に訪れることは避けるようにしてください。
一般観光客の立入が禁止されているクウェートシティの証券取引所。
写真撮影
宮殿や警察、軍施設、石油施設、国境付近などの撮影は禁止されています。相手の了解を得ない限り、女性の方にカメラを向けてはいけませんが、風景の中に入る程度の撮影であれば基本的には問題ありません。子供たちは、むしろ彼らの方からにこやかに手を振ってくることが多いので、撮影してもまず問題はありません。
クウェートタワー近辺の海外でゴミ拾いをするお母さんたちと少女たち。外国人である私の存在が珍しかったのか、ニコニコ笑いながら快く写真を撮らせてくれました。
クウェートタワー近辺の広場でサッカーに興じるティーンエイジャーの少年たち。
クウェートタワー近辺の広場で野球に興じる小学校低学年くらいの少年たち。
クウェートシティのシンボルであるクウェートタワー。
クウェートシティのもう1つのシンボルである解放タワー。
また、上記以外の禁止されていない場所を撮影される際にも、周りに警察官や警備員がいたり、不特定多数の人々に囲まれた状態で撮影する行為は、くれぐれも慎んでください。
情報省Ministry of Informationで撮影の可否の確認、許可申請ができるので、禁止されている場所をどうしても撮影したい場合には申請してみてください。
インターネット
クウェートではアダルト関係のサイトや、女性の水着姿の写真が掲載されているサイトの閲覧は禁止されており、アクセスすることはできず、もしアクセスすれば「どうしてもアクセスが必要な場合は、理由を明記した申請書を提出し、情報省Ministry of Informationに申請すること」と書かれた警告が英語とアラビア語の併記で表示されます。もちろん、日本語のサイトも例外ではありません。
まさかアダルトサイトにアクセスしたいがために情報省に申請しに行くような方はいないと思いますし、そもそもそんな方はクウェートには行かないとは思いますが、警告が表示された後に罰金や罰則が課せられたり、まして逮捕されるようなことはないものの、最初からそのようなサイトにアクセスする行為は慎むようにしてください。
ちなみに、恋愛関係や結婚関係のサイトであれば全く問題なくアクセスできます。
ルールとマナーを守ってクウェートでの快適なご滞在を
クウェート滞在時の注意事項を記載しましたが、一部にテロや犯罪は残念ながら起きてはいるものの、国民議会を発展させた穏健な王政の下、人々は温和で人懐こく、治安は良好で恐怖政治や無差別テロにも大半の人々は汚染されておらず、近代化とイスラム伝統文化を両立させながら独自の発展を遂げた、クウェートはとても魅力的な国です。
ルールとマナーさえ守れば、平和に十分問題なく過ごせますので、ルールとマナーを遵守して、クウェートでの快適な滞在をお楽しみください。
(参考に)クウェートの各種情報
航空券
日本からの直行便はありません。東京(羽田or成田)からだとアブダビ、ドバイ、ドーハ、イスタンブール等の経由便があり、乗継地までは約12時間、そこからクウェートまで1~2時間程度の移動となるため、乗継の待ち時間を含めて約20時間かかります。
航空会社はカタール航空、エミレーツ航空、エティハド航空、ターキッシュエアラインズなど。
航空運賃は12万円~14万円が目安ですが、GW休暇や盆休みなどの連休や、航空会社の時間帯によって航空運賃が18万円近くまで跳ね上がることもあるのでご注意。
詳しくは、HISやスカイチケット、エクスペディアなどで航空券の検索を。
海外旅行はエイチ・アイ・エス
空港でのビザ取得
3か月間有効の滞在ビザが、入国時に空港で取得できます。費用はKD3。クレジットカードでの支払いはできません。到着ロビーのカウンター付近の銀行でKDに両替した後、申請用紙に名前などの必要事項を記入します。
ビザ取得用の印紙を自身で自販機で購入し、すぐ傍にあるコピー機でパスポートの顔写真入りのページをコピーして、必要事項を記入した申請用紙およびパスポートの原本と共に、カウンターに提出してビザを取得します。申請時には、パスポートに見開き2ページ以上余白が残っていることが必要になります。
なお、KDの現金がなければ自販機で印紙を購入できないため、入国時にはカウンターのすぐ近くにある空港銀行で両替してもらう必要があります。その際の注意事項については、本ページ下部の「クウェート滞在時の諸注意」に関する関連記事をご参照ください。
言語
公用語はアラビア語ですが、英語の通用度は非常に高く、バスやタクシー、レストラン、博物館でも普通に英語が通じます。交通標識や案内掲示板などにもアラビア語と英語が必ず併記されているため、英語が話せれば不自由に感じることはありません。
通貨
通貨単位はクウェート・ディナールとフィルス。現地表記はKDおよびFils。KD1が1000Filsおよび約370円程度に相当します。
時差
日本よりマイナス6時間。
宿泊施設
クウェートにはゲストハウスやエコノミーホテルのように安価な宿泊施設はありません。宿泊施設はビジネスホテルのレベルのものからで、最低でも7000円/泊はかかります。
その一方で、物価が高いクウェートシティ中心部でも10000円/泊未満で宿泊できるビジネスホテルは多数あり、そこそこ設備も整っていて周囲の騒音もさほどないため、わざわざ高級ホテルに宿泊する必要はありません。
ホテルの条件(Wi-Fi、冷蔵庫、エアコン、目的地へのアクセス、朝食の有無等)をよくご確認ください。特に、クウェートは常夏の国で、冬でも最低温度が25℃にはなるため、エアコンと冷蔵庫は必須と言えます。観光地としての知名度があまり高くない国なので、夏季や冬季の長期休暇でもそれ以外の日程でも、宿泊費はそれほど大きくは変わりません。
詳しくはエクスペディアやBooking.com、トリップアドバイザー等で検索を。
リアルタイム空室確認が分かりやすい!エクスペディアの海外ホテル
海外ホテル検索、Booking.com
TripAdvisor (トリップアドバイザー)
関連記事
湾岸アラブ諸国の近代都市の関連記事
石油の富を背景にして近代化を遂げつつ、石油の発見以前からのイスラム伝統文化も混在させている湾岸アラブ諸国の都市の光景に関しては、下記記事を併せてご参照ください。
- 湾岸アラブの近代化と伝統文化が混在する世界―クウェートの大型ショッピングモールと魚市場とダウ船から読み解く
- 湾岸アラブの近代化と伝統文化が混在する世界―クウェートの高層ビル群とモスクから読み解く
- 湾岸アラブの近代化と伝統文化が混在する世界―バーレーンの高層ビル群と旧市街の市場通りから読み解く
湾岸戦争に関わる見所の関連記事
クウェートが湾岸戦争時にイラクの侵攻で受けた破壊の爪痕や、破壊されつつも現在は見事に復旧され人々の憩いの場になっている見所については、下記記事をご参照ください。
湾岸アラブと石油の歴史の関連記事
それぞれの湾岸アラブ諸国で石油がいつ頃、当時のどのような社会事情を背景にして発見されたのか、石油の発見にはどのような人物や会社が関わったのかの歴史考察については、下記記事を併せてご参照ください。
湾岸戦争の歴史的経緯の関連記事
湾岸戦争がなぜイラクに侵攻されることになり、戦時下のクウェートでどのような事態が生じたのか、その歴史的経緯については、下記記事をご参照ください。
- 湾岸戦争の歴史考察―米国主導の多国籍軍の介入で10万人のイラク人が犠牲に
- 湾岸戦争の歴史考察―イラクのクウェート侵攻と戦前日本の太平洋戦争の類似点
- 湾岸戦争の歴史考察―なぜクウェートはイラクの恨みを買ったのか