トロール漁船によるアイスランド漁業の発展の歴史を、海洋博物館の展示から読み解く

こんにちは。今日も私の記事を訪問してくださりありがとうございます。

 

さて、アイスランドという国に対して、どのようなイメージをお持ちでしょうか?

 

恐らく、多くの方々は、火山や氷河といった、壮大な大自然のイメージをアイスランドに対してお持ちかと思います。

 

確かに、壮大な大自然はアイスランドの大きな見所ですが、過酷な大自然を持つ環境の国で人々が営んできた産業を記録した博物館の充実もまた、アイスランドの隠れた見所の1つです。

 

そうした、過酷な環境下でアイスランドの人々が営んできた主力の産業の1つが漁業であり、首都レイキャビクの海洋博物館では、漁業の歴史に関する記録がとても充実しています。中でも、漁業の本格的な発展と近代化がトロール漁船とともに始まったのだと知ったことは、海洋博物館の見学での大きな発見でした。

というわけで、今回はアイスランドのレイキャビクにある海洋博物館の展示に基づき、トロール漁船の誕生と開発によって急速に近代化したアイスランドの漁業の歴史に関する記事を書かせて頂きます。

 

 

トロール漁船で可能となったアイスランドの漁業と産業の現在

 

10世紀の植民以来、農業や畜産業と並んで、漁業はアイスランドの主産業でした。20世紀からの工業やサービス業の発展に伴い、GDPに占める漁業の割合は、20世紀半ばには40%だったものが、現在では10%まで低下しています。しかし、それでも今なお漁業がアイスランドの輸出を担う基幹産業であることには変わりありません。

 

一方で、アイスランドの漁業が本格的に発展したのは、1905年にイギリスから初のトロール漁船が伝わり、底引き網を用いてより深い水深と広大な海域で漁業が可能となり、漁船の大型化と近代化が促進されてからになります。

 

20世紀初頭にアイスランドや北欧で使われていたトロール漁船。

 

トロール漁船の誕生以前にアイスランドで使われていた木造漁船。

 

なおかつ、漁業の近代化は、漁業に関連するアイスランドの様々な産業の近代化にもつながることになりました。即ち、アイスランドの漁業と産業の現在の姿は、トロール漁船と共にあると言っても過言ではありません。

 

ちなみに、工業やサービス業の割合の増加に伴い農林水産業が減少する構図は日本も同じですが、日本の場合、農林水産業の割合は1%まで低下しているので、日本に比べると、アイスランドでは基幹産業としての漁業はまだまだ健在だと言えます。

 

 

トロール漁船によるアイスランドの漁業近代化の展示

 

トロール漁船の誕生により、漁船の大型化および、遠洋漁業範囲と水深範囲の拡大により漁獲量が激増し、さらには様々な関連産業の発展にもつながりました。

 

レイキャビクの海洋博物館の2階の展示スペースには、近代化以前の旧式の漁業の展示エリアのすぐ傍に、近代化以降の展示エリアがあります。

 

 

トロール漁船の大型蒸気エンジンの実物

 

まず展示スペースの入口には、トロール漁船に現在も用いられている大型エンジンの実物が展示されています。

 

このエンジンはアイスランド製ではありません。1919年にノルウェーで開発され、1924年にアイスランドに輸入された、149トントロール漁船向けのエンジンです。このエンジン自体も1917年にノルウェーで開発され、8.5トンの重量を誇ります。

 

近代化以前の木造漁船には、当然エンジンなど取り付けられないので、トロール漁船の発展はエンジンの発展があってこそだと言えます。

 

 

トロール漁船による漁港の発展と雇用の促進

 

漁船の発展は漁港の発展をもたらし、漁船と漁港の近代化と大型化は、漁業における雇用の促進にもつながりました。

1910年のレイキャビク港にて、塩漬けにされた魚を漁船からワゴンに移し替える作業の写真です。

 

同じくこちらは1910年~1920年にかけて、レイキャビク港を拠点に用いられていたトロール漁船の写真。

 

そしてこちらは1916年当時にトロール漁船で働いていた船員たちの写真です。

 

 

トロール漁船内の船員の寝室や食料貯蔵用の樽

 

もちろん館内にはトロール漁船に関連する実物の展示も多数あり、当時の船員たちの寝室や、食料貯蔵用の樽の展示などもあります。

 

こちらの船内の寝室の再現展示は、1946年当時に使われていたトロール漁船内の寝室を模したものです。

 

そしてこちらが船員の食料貯蔵用の樽の実物の展示です。

 

この当時はまだ船内に冷蔵設備がなく、数週間に渡る航海中、船員たちは陸地にいる時のような新鮮な食料は絶対に入手できないため、鮮度を保つための食料の貯蔵と保存はまさに死活問題でした。

寝室の模造展示のすぐ傍には、当時の船員たちの食事風景の写真もあります。

 

 

トロール漁船の設計図

 

漁船の大型化と近代化を可能にするためには、漁船の設計技術の発展が不可欠になります。館内には、戦前に使用されたトロール漁船の設計図も展示されています。

木造漁船の時代には漁船の設計図の作成などは行いませんでしたので、設計技術や設計図の発展もまた、トロール漁船の誕生と発展があったが故と言えます。

 

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漁船の大型化による漁獲量の増加と船上作業の洗練化

 

漁船の大型化により、漁獲量が増加したばかりでなく、捕獲した魚を保存する技術もより洗練されたものとなり、魚の腹を掻っ捌いて内臓を抜き取り、その上で塩漬けにするといった一連の作業を船上で行うことが可能となりました。

 

船上で保存される魚と保存作業に従事する船員たちの写真。

 

 

船内設備と無線室の発展

 

トロール漁船による漁船の大型化と近代化は、操舵を始めとする、船内設備の技術発展にもつながりました。

 

 

 

館内に展示された操舵、ランプ、コンパス等の船内設備。

 

また船内設備の発展を最も著しく象徴しているのが、無線室の誕生と発展です。

アイスランドで使われているトロール漁船に初めて導入された、1920年の無線室の展示です。

 

 

同じく無線室内部に設置された無線とデスクの様子。無線の業務に従事した当時の担当者の写真もあります。

 

当初は漁船に無線室を導入する際、設備設置のスペースの確保が大きな問題でしたが、無線機の小型化と、無線室の壁を耐久性のある材質に変更することで、この問題は解決したようです。

 

 

船員養成学校や船員の家庭の近代化も促す

 

漁船の大型化と近代化、それに伴う漁業の発展は、漁業に従事する船員養成学校の近代化、さらには船員たちの家庭の近代化をも促すことになります。

1898年に新たに開校した船員養成学校と学生たちの写真。この学校は1945年まで続きます。

 

 

 

1950年代の船員の家庭内の展示。現在と変わらないアットホームな雰囲気が見て取れます。

 

船員の家庭の近代化の促進は、単に漁業技術の発展による船員の所得の増加だけでなく、イギリスやドイツ方面までの遠洋漁業が可能になり、船員たちがアイスランドにはない、海外のお土産を家庭に持ち帰ることが可能になったためです。

 

主力産業である漁業の発展と近代化が、各家庭に確実に豊かさをもたらしたことが見て取れます。

 

 

アイスランドの漁業が今後も衰退せずに活況を維持することを

 

今なお漁業がアイスランドの基幹産業であることは間違いありませんが、工業やサービス業の発展、特に観光業や再生エネルギー事業の発展に伴い、GDPに占める漁業の割合は年々低下しています。漁獲量は世界的に多いものの、一方でタラなどの主力の魚の漁獲量が減少しており、それが魚の価格の上昇、輸出量や国内での消費量の低下をもたらす結果となっています。

 

首都レイキャビクでも、美味しいシーフード料理は海外の観光客にとっては大きな魅力には違いありませんが、一方で料理の値段がべらぼうに高いことが難点です。経済構造と主力産業の転換に伴い、アイスランドの漁業は果たしてどこに向かうのか。

 

アイスランドの主力産業が今後は観光業になることは間違いありませんが、観光客にアイスランドを魅了させ、シーフード料理の価格の低下につながるためにも、今後もアイスランドの漁業には衰退することなく、活況を維持し続けてほしいものです。

 

 

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レイキャビク海洋博物館の各種情報

 

入場料

 

博物館内部だけの見学はkr1500。オージン号の船内ツアーだけでもkr1500。博物館見学+オージン号ツアーのセットであればkr2200。

 

 

開園時間

 

博物館の開放時間は10時~17時。オージン号の船内ツアーは13時、14時、15時の3回。

 

 

アクセス

 

14番の市内バスのグランダガズル(Grandagazur)のバス停から徒歩1分。

 

バス停から見た博物館の外観。

 

博物館の港側に停泊している沿岸警備艇オージン号の外観。船内ツアーは今回は時間が合わず果たせなかったので、次回のお楽しみにしたいと思います。

 

 

レイキャビクでの市内バスの乗り方

 

市内バスの乗車券の購入場所は少なく、ケフラヴィーク国際空港の他、10-11というスーパーマーケットでも購入できます。1回だけの乗車券はkr440、1日券はkr1500、3日券はkr3100になりますので、滞在中の乗り降りの頻度に合わせてご活用ください。なお、運転手から現金で乗車券を購入することもできますが、お釣りが出ませんのでご注意。

 

10-11スーパーマーケット。緑色の看板が目印。

 

レイキャビク市内のバス。どの路線のバスも一様に黄色い車体です。

 

市内バスの路線図は、上述のケフラヴィーク国際空港や10-11スーパーマーケット、あるいは滞在中のホテルでも入手可能なので、目的地の最寄りのバス停をご確認の上、該当する路線バスをご活用ください。

 

市内中心部にあるライキャルトルグと、ケフラヴィーク国際空港と市内を結ぶフライ・バスの発着するBSIバスターミナルに行くには、主に1番、3番、6番の市内バスを使います。バスの本数はどの路線も1時間に4本程度です。

 

 

周辺地図

 

 

 

(参考に)アイスランドの各種情報

 

航空券

 

日本からの直行便はありません。東京(羽田or成田)からだとパリ、コペンハーゲン、ヘルシンキ、アムステルダム等の経由便があり、乗継地までは約12時間、そこからレイキャビクまで3~4時間程度の移動となるため、乗継の待ち時間を含めて約20時間かかります。

航空会社はエアフランス、スカンジナビア航空、フィンランド航空、KLMなど。

 

航空運賃は28万円~35万円が目安ですが、GW休暇や盆休みなどの連休や、航空会社の時間帯によって航空運賃が40万円近くまで跳ね上がることもあるのでご注意。

 

詳しくは、HISやスカイチケット、エクスペディアなどで航空券の検索を。
海外旅行はエイチ・アイ・エス

海外格安航空券を探すなら スカイチケット!

【航空券+ホテル】海外旅行エクスペディア★パッケージツアー

 

 

ビザ

 

3か月以内の滞在であればビザは不要。ただしパスポートの有効期限が、アイスランドを含むシェンゲン協定加盟国出国時に3か月以上残っていることが必要となります。それ以上の滞在や留学などはビザが必要であるため、駐日アイスランド大使館などでご確認を。

 

 

言語

 

公用語はアイスランド語ですが、英語の通用度は非常に高く、市内バスやタクシーでも普通に英語が通じます。交通標識や案内掲示板などにもアイスランド語と英語が必ず併記されているため、英語が話せれば不自由に感じることはありません。

 

 

通貨

 

通貨単位はクローナ(単数)とクローヌル(複数)。現地表記はkr。kr1が約1円程度に相当。

 

 

時差

 

日本よりマイナス9時間。

 

 

宿泊施設

 

安価なホテルであっても最低15000円/泊はかかり、そこそこ設備の良いホテルだと20000円/泊以上かかります。ホテルに限らず、1食最低5000円以上かかる食費や交通費など、アイスランドでは全般的に物価が高いです。

 

10000円/泊未満で泊まれるホテルもありますが、寒いのに暖房が使えなかったり、市内中心部に行くのに市内バスで20分以上かかってアクセスが不便だったりといった難点があるので、あまりお勧めはしません。

 

ホテルの条件(Wi-Fi、冷蔵庫、エアコン、目的地へのアクセス等)をよくご確認ください。夏季や冬季の長期休暇が近づくほど宿泊費が高くなるため、早めに予約するようにしてください。詳しくはエクスペディアやBooking.com、トリップアドバイザー等で検索を。
リアルタイム空室確認が分かりやすい!エクスペディアの海外ホテル
海外ホテル検索、Booking.com
TripAdvisor (トリップアドバイザー)

 

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海洋博物館のメインの展示は漁業の発展の記録ですが、漁業の発展がもたらす波及効果は、単に漁業の発展だけには留まりません。本記事も含めた、そんな海洋博物館のいくつかの見所については、下記記事も併せてご参照ください。