天然真珠産業時代の湾岸アラブ世界―バーレーンの国立博物館の展示から読み解く天然真珠産業と改革期の記録

こんにちは。今日も私の記事を訪問してくださりありがとうございます。今回はバーレーンの首都マナーマにある国立博物館の展示に基づき、天然真珠産業がバーレーンの主要産業だった時代の光景、さらには石油産業勃興前後における首長たちの改革の記録についての記事を書かせて頂きます。

 

 

天然真珠産業の時代を窺い知ることができる国立博物館

 

1932年の石油の発見や、日本の御木本幸吉らが開発した養殖真珠の台頭によって衰退するまで、天然真珠産業はバーレーンの主要産業でした。マナーマの国立博物館の展示からは、天然真珠産業が主要産業だった当時の光景を窺い知ることができます。

 

これは国立博物館の裏口にある、真珠採取に従事していた潜水士の彫像です。天然真珠産業が最盛期を誇った時代の潜水士たちへの想いが込められているかのようです。

 

博物館内には、石器時代から現在に至るまでのバーレーンの歴史が、1階~3階までのいくつかのエリアを用いて時代別の色々な展示を元に説明されていますが、やはり最も興味深かったのは天然真珠産業の展示でした。

 

 

ダウ船を用いた天然真珠採取の潜水作業の光景

 

大勢の潜水士たちを乗せていた当時の大型ダウ船が、館内にはミニチュアで再現されています。

模型も緻密で良くできていますし、海を模した水槽の色使いもとても綺麗です。

 

ダウ船では、潜水士と縄の引き上げ役2人1組で作業が行われ、1回1~2分程度の息が続く限りの潜水作業で採取できる真珠貝の数は、平均で8~12個だったとのこと。潜水はグループ単位で行われ、他のグループの作業時は休憩となります。潜水士たちが息を止めて素潜りに近い状態で行う海中作業の時間は長く、極めて過酷な労働でした。

 

博物館内には、そんな当時の真珠採取の潜水作業の写真も多数掲載されています。

 

 

 

 

こちらは採取した真珠貝の口を開けて真珠を取り出す作業をする人たちの様子を再現したレプリカ。真珠貝から取れる真珠は稀少で、3万5000個の真珠貝のうち商品価値のある真珠は3個だけしかなかったとも言われています。

 

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過酷な待遇に置かれた潜水士たちの作業許可証や様々な記録

 

当時は真珠商人たちが富裕を極める一方、潜水士たちの多くは富裕商人からの借金の高利貸しにより、家族共々不払い労働を強制される不当な待遇に置かれていました。館内には、そんな潜水士たちの置かれた環境を暗示する記録も展示されています。

 

これはそうした借金の返済が完了し、潜水士が不払い労働からようやく解放されることを示す当時の証明書の展示です。

 

 


上の2つの写真は、法廷から発行された潜水士に対する作業許可証の展示。いずれも1930年代初頭のものです。

 

この写真は、季節ごとの真珠の収穫量を示した記録の展示。1910年のものです。

 

真珠採取のための本格的に潜水が行われる6月から9月末までの間、真珠採取船はほとんど陸には戻れない状態でした。

 

過酷な産業ながらも、石油発見以前は紛れもなくバーレーンの主要産業で、20000人を超える潜水士が500隻以上のダウ船を用いて真珠産業に従事しましたが、石油産業が発展した1950年代には潜水士は約500人、ダウ船は11隻という具合に激減し、60年代にはほぼ完全にバーレーンの真珠産業は終焉を迎えました。

 

 

目も眩む輝きと光沢を持つ天然真珠の実物の展示

 

博物館内には、当時に採取された天然真珠の実物の展示ももちろんあります。

 

 

 

 


さすがは天然真珠といった感じで、真珠もネックレスも思わず目が眩みそうになるほどの輝きと光沢を持っていますが、ダイヤモンドや真珠のような奢侈品に関わる産業は特に、潜水士のように貧しい人たちの過酷な労働の上に成り立っているのかもしれません。

 

 

天然真珠産業衰退期の改革と首長たちの記録写真

 

1930年代に入って世界恐慌や養殖真珠の台頭で天然真珠産業を始めとする多くの旧産業が衰退し、当時の王族たちは産業や経済の転換と近代化に向けての大幅な改革を余儀なくされました。

 

館内には30年代当時の、石油産業勃興前後の改革によって大幅に変化したバーレーンの光景と、当時の首長たちの写真が記録として展示されています。

 

30年代初頭に移設・拡張が開始された当時の国際空港の写真。

 

バーレーン初の病院の写真。1926年に拡張を開始された当時のものです。

 

こちらの写真は1939年~42年にかけて業務を開始した別の病院の写真。42年に亡くなったハマド首長の最後の統治時期であり、ハマド首長とイギリスの女王が開会する写真も一緒に掲載されています。

 

 

 

イーサー首長やハマド首長やサルマン首長の写真や、彼らが断行した改革の記録も掲載されています。

 

上の写真はいずれも、真珠産業の黄金期と衰退期、石油産業の勃興と発展の時期であり、イーサー首長、ハマド首長、サルマン首長の時代に該当します。記録写真から、この3代の首長たちの時代にバーレーンが大きな変化を遂げたことが見て取れます。

 

 

首長家に代々受け継がれたコーランの展示

 

一方、首長たちの改革や天然真珠産業の衰退の中でも、変わらないものの象徴として、首長家に代々受け継がれてきたコーランも館内に展示されています。

 

いずれも贅沢で豪華な色使いの表紙が使われていて、過去から現在に至るまでの、首長家の地位の高さや資産の大きさを窺い知ることができます。

 

 

産業転換や民主化で難しい対応を迫られるバーレーン政府

 

天然真珠産業に代わって主要産業となった石油産業も、現在はかつてのような力は失いました。しかし産業の多角化や石油依存からの脱却は進んでおらず、また、シーア派のデモ隊と治安部隊の衝突は、バーレーンも一歩間違えれば国が崩壊につながる危険性を露呈しました。時代が変わって国が抱える問題も変化する中、バーレーン政府は産業転換や民主化に向けて、今後ますます難しい対応を迫られることになるのかもしれません。

 

 

平和な国の魅力を維持しつつバーレーンには発展を続けてほしい

 

それでも、戒律や統制が緩く穏健で、恐怖政治やテロリズムとはほぼ無縁で平和な国であることがバーレーンの最大の魅力であるので、これからもその魅力は保ち続けてほしいですし、国民にとっても外国人にとってもより魅力的な国であり続けるよう、これからもバーレーンには発展を続けてほしいものです。

 

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バーレーン国立博物館の各種情報

 

入場料

 

BD1。ただし12歳以下の児童であれば無料。

 

 

開園時間

 

8時~20時。無休。

 

バーレーン国立博物館の建物と入口の外観です。

 

博物館の入口前の広場はこんな感じです。

 

 

アクセス

 

バーレーン国際空港から国立博物館まではタクシーで約12分程度。タクシー代は片道でBD5~6程度になります。

 

 

周辺地図

 

 

 

(参考に)バーレーンの各種情報

 

航空券

 

日本からの直行便はありません。東京(羽田or成田)からだとアブダビ、ドバイ、ドーハ、イスタンブール、コロンボ、マニラ、香港等の経由便があり、乗継の待ち時間を含めて約20時間かかります。

航空会社はカタール航空、エミレーツ航空、エティハド航空、ターキッシュエアラインズ、キャセイパシフィック航空、フィリピン航空、スリランカ航空など。

 

航空運賃は12万円~14万円が目安ですが、GW休暇や盆休みなどの連休や、航空会社の時間帯によって航空運賃が18万円近くまで跳ね上がることもあるのでご注意。

 

詳しくは、HISやスカイチケット、エクスペディアなどで航空券の検索を。
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空港でのビザ取得

 

入国時に空港で滞在ビザを取得できます。費用はそれぞれ、シングルビザ(2週間)がBD5、マルチビザ(1か月)がBD25になります。米ドル、ユーロ、クレジットカードでの支払いも可能であるため、入国時に比較的容易に取得できます。ビザ申請時には、バーレーン出国時におけるパスポートの残存有効期間が6か月以上あることが必要になります。

 

 

言語

 

公用語はアラビア語ですが、英語の通用度は非常に高く、バスやタクシー、レストラン、博物館でも普通に英語が通じます。交通標識や案内掲示板などにもアラビア語と英語が必ず併記されているため、英語が話せれば不自由に感じることはありません。

 

 

通貨

 

通貨単位はバーレーン・ディナールとフィルス。現地表記はBDおよびFils。BD1が1000Filsおよび約300円程度に相当します。

 

 

時差

 

日本よりマイナス6時間。

 

 

宿泊施設

 

バーレーンにはゲストハウスやエコノミーホテルのように安価な宿泊施設はありません。宿泊施設はビジネスホテルのレベルのものからで、最低でも6000円/泊はかかります。

 

その一方で、物価が高い首都マナーマの中心部でも10000円/泊未満で宿泊できるビジネスホテルは多数あり、そこそこ設備も整っていて周囲の騒音もさほどないため、わざわざ高級ホテルに宿泊する必要はありません。

 

ホテルの条件(Wi-Fi、冷蔵庫、エアコン、目的地へのアクセス、朝食の有無等)をよくご確認ください。特に、バーレーンは常夏の国で、夏季(6月~9月)には最高気温が40℃を超えることもあり、冬でも最低温度が25℃にはなり、湿度が年平均で80%にも達するため、エアコンと冷蔵庫は必須と言えます。夏季や冬季の長期休暇時には、宿泊費が多少高くなることがありますのでご注意ください。

 

詳しくはエクスペディアやBooking.com、トリップアドバイザー等で検索を。
リアルタイム空室確認が分かりやすい!エクスペディアの海外ホテル
海外ホテル検索、Booking.com
TripAdvisor (トリップアドバイザー)

 

国内の見所を短時間で効率良く回るならベルトラの現地オプショナルツアーで

 

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首都マナーマの見所を1日で回るツアーでは、国内で最大規模を誇るグランドモスクを始め、国立博物館、コーラン資料館、旧市街の市場通りや中心部の大型ショッピングモールなどの主要な見所を8時間で回ることができます。

 

また、4時間かけての半日だけのツアーも様々なものが催行されており、ムハッラクの世界遺産を巡るツアー、第1号油田と石油博物館と生命の木を見学するツアー、ディルムン文明の遺跡を巡るツアーなどが、主な半日だけのツアーとして催行されています。

 

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ベルトラの現地オプショナルツアーのメリットとデメリットに関しましては、ブログ内の下記の別記事をご参照ください。

 

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