- 投稿 2016/09/04
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こんばんは。前回からかつての紛争都市としての視点でベルファストを書かせて頂いており、今回から数回に分けて、公営住宅街のある西ベルファストについて書かせて頂きます。まず今回は西ベルファストのカトリック地区のフォールズ通りについて。
目次
低所得層の人々が暮らす西ベルファストの公営住宅街
西ベルファストは、ベルファストの中でも低所得層の人々が住む公営住宅街です。カトリック地区、プロテスタント地区いずれも、公営住宅の二階建てフラットが立ち並んでいます。賃貸住宅ではあるものの、多くの人たちは自分の持ち家的な感覚で居住しており、建物そのものはイギリス風のしっかりしたレンガ造りなので、貧しい人たちの居住区と言われてもあまりピンと来ません。
かつてはIRA過激派の溜まり場だったフォールズ通り
さて、そんな西ベルファストの中でも、IRA(アイルランド共和軍)の過激派たちのかつての溜まり場であり、警察や軍とIRAとの戦闘で日々多くの人々が亡くなり、紛争当時はハイリスク・エリアとされていたカトリック地区のフォールズ通りに入ります。紛争が終結した現在はどうなっているのか。
フォールズ通りでは今も、政治的な意味合いの強い壁画が数多く見られます。
アイルランド共和国の三色旗に、アイルランドは32の州だということを強調する壁画。アイルランド共和国に属するのはアイルランド島のうち26の州だけで、ベルファストのあるアルスター地方の6の州はイギリスに残存しています。
アルスターの分離独立、さらには残りの6の州もアイルランド共和国に統合すべきというのがアルスターのカトリック系住民の主張で、そのために殺人も辞さなかったのがIRA。この壁画は単に紛争当時の名残なのか、あるいは紛争が終結した今でもカトリック系住民は分離独立やアイルランド共和国との統合を諦めていないのか。
街中に掲げられる三色旗とハンガーストライキの犠牲者の写真
厳密には西ベルファストはイギリスの土地なのですが、フォールズの街の至る所にアイルランド共和国の三色旗が掲げられ、電柱には1981年にイギリスの刑務所でハンガーストライキを敢行して亡くなった、ボビー・サンズを始めとするIRAメンバーたちの写真が掲げられています。
ただ、81年当時のIRAと、90年代のIRAとは厳密には違います。というのは81年のハンガーストライキ前後に、獄中のメンバーたちが武装闘争の停止を呼びかけ、それに反発した者たちがさらなる過激派として分裂したのが90年代のIRAだからです。
カトリックの政治目的を掲げる無数の壁画
カトリック居住区のフォールズには、アルスターの分離独立とアイルランド共和国への統合という政治目的を掲げる壁画がやたら多いです。
中にはマンデラ大統領とアイルランド三色旗が一緒に描かれた壁画もあります。
IRAから分派した、IRAよりもさらに過激な無差別テロ集団を称えるような壁画もあります。
いくらなんでも、殺戮に訴える無差別テロ集団を称えるというのは正直気持ちが悪いです。
スペイン内戦の反政府派として加わった30年代のIRAメンバーたちに絡んだ壁画や。
中には環境危機を煽るような類の(地球全体に均等ではなく、抑圧されたアルスターには特に強く危機が降りかかるといった)壁画もあります。過剰な被害者意識もほどほどに。
小規模な商店街とカトリック系教会
カトリック系教会もあります。かと言って、住民が皆熱心な信者というわけでもなく、皆が皆熱心に教会に行くわけでもありません。そこがかつてのこの紛争の、そして現在のこの分断や亀裂の理解しがたいところです。
中には4階建てのやや高級感のあるマンションも
2階建てフラットの多い住宅街ですが、中には4階建てのやや高級感のあるマンションもあります。
とは言え、平均的にはやはり2階建てフラットが圧倒的に多いです。
今なお続くプロテスタント地区との分断と亀裂
紛争が終結したことで、爆弾テロリストも警察や軍の戦車や装甲車もいなくなり、平和になったカトリック地区。しかし街が平和になった今でも、残された無数の政治的な壁画に象徴されるように、プロテスタント地区との分断や亀裂は今なお続いているようです。
北アイルランドだけに限りませんが、本当の平和とは何なのか、和解とか共存とは一体何なのか、考えれば考えるほど、正直よく分からなくなってくるのがこの西ベルファストという街でした。次回は同じカトリック地区にある、バリーマーフィー通りについて記事を書かせて頂こうと思います。
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北アイルランド紛争に関する歴史考察
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アクセス
メトロバスNo.82, 106a, 106b, 532でバス停Twin Spiresより徒歩3~4分。
ベルファスト国際空港から市内には、エアポート・エクスプレスバスNo.300でヨーロッパ・バス・センターまで約35分。
ダブリンからベルファストには鉄道でコノリー駅から約2時間10分、エアコーチバスがオコンネル・ストリートから約2時間20分、バス・エーランがオコンネル・ストリートから約2時間25分になります。ダブリン国際空港からも両社のベルファスト行きのバスは出ています。バスの本数は1時間に1本程度あります。
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カテゴリ:海外旅行全般 > 現地発オプショナルツアー
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鉄道の移動でもダブリンからベルファストには2時間程度で行けます。日本で予め移動手段を確保しておけば安心感はあるかと思います。
周辺地図
(参考に)北アイルランド(イギリス)の各種情報
■航空券
日本からの直行便はありません。東京(羽田or成田)からだとロンドン経由の便が主力で、乗継地までは約12時間、そこからベルファストまで2時間程度の移動となるため、乗継の待ち時間を含めて20時間程度かかります。
ドバイ経由の便もありますが、ドバイを経由した後にイギリスのマンチェスターなどを再度経由することになるため、2回の乗継の待ち時間も含めて30時間程度かかります。
航空会社はブリティッシュ・エアウェイズが主力で、ドバイを経由する場合はエミレーツ航空とイギリスのローカル航空会社の共同便になります。航空運賃は12万円~17万円が目安ですが、GW休暇や盆休みなどの連休や、航空会社の時間帯によって航空運賃が20万円近くまで跳ね上がることもあるのでご注意ください。
ドバイやドーハなどを経由して、ダブリンへの往復便を利用し、ダブリンからベルファストへは電車での往復をするようにすれば、トータルの料金を10万円以下に抑えることも可能です。
詳しくは、HISやエクスペディアで航空券の検索を。
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■ビザ
6か月以内の滞在であればビザは不要。ただし空路で入国した場合には、入国時に往復航空券を提示することが必要となります。ダブリンからバスや鉄道で北アイルランド入りした場合は、税関や入国審査は特にありません。6か月以上の滞在や留学などはビザが必要であるため、駐日英国大使館などでご確認を。
■言語
英語
■通貨
通貨単位はアイルランドポンド(IEP)。1€が約165円程度に相当。ダブリンからバスや鉄道で北アイルランドされる場合、アイルランドで使用されていたユーロは使えなくなるのでご注意ください。空港や鉄道駅、銀行などの両替で、ユーロをアイルランドポンドに両替するようにしてください。
■時差
日本よりマイナス9時間(サマータイム実施中は日本よりマイナス8時間になります)。
■宿泊施設
安価なホテルやゲストハウス、ドミトリーなどであれば3000~4000円/泊程度でも泊まれますが、そこそこ設備の良いホテルだと7000円/泊以上かかります。
ホテルの条件(Wi-Fi、冷蔵庫、エアコン、目的地へのアクセス等)をよくご確認ください。特に、北アイルランドでは夏でも肌寒く、最高気温でも15~16度にしかならないので、暖房の有無をご確認ください。夏季や冬季の長期休暇が近づくほど宿泊費が高くなるため、早めに予約するようにしてください。詳しくはエクスペディアやBooking.com、トリップアドバイザー等で検索を。
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