- 投稿 2017/06/08
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こんにちは。今日も私の記事を訪問してくださりありがとうございます。
アラブ・イスラム世界というと、アルカイダやイスラム国のような無差別テロ集団が幅を利かせた、イラク、シリア、リビアのような破綻した紛争国家のイメージが強いかと思います。そしてそれらの国々の現在があまりに酷いがために、サダム・フセインやカダフィのような過去の残忍な独裁者たちが美化される傾向にあります。
しかし、独裁者たちが国際テロリストの支援や周辺国への侵略、自国民の虐殺などでもたらした脅威は、決して軽んじて良いものではありません。サダム・フセイン時代のイラクに侵略された周辺国の1つがクウェートですが、そのクウェートはイラクの侵略によって大勢の人が殺害されましたが、イラクが完全撤退した後、再び平和な国に戻りました。
つまり、恐怖政治を敷く独裁者とも無差別テロ集団とも無縁の国を築くことはアラブ・イスラム世界でも可能であることを、クウェートは示しています。
というわけで今回は、湾岸戦争が終結して約26年が経過し、発展を維持し続ける首都のクウェートシティの、平和を謳歌する市民たちの憩いの場となっているクウェートタワー近辺についての記事を書かせて頂きます。
目次
湾岸戦争後に復旧された平和の象徴であるクウェートタワー
クウェートタワーは、1979年に一度完成した当時からクウェートシティのシンボルでしたが、1990年~1991年の湾岸戦争でイラク軍に侵略された際に攻撃で大きな損傷を受け、サダム・フセインとイラク軍が撤退した戦後、復旧されました。
湾岸戦争終結と復旧から約26年経過した今では、戦争の爪痕を感じさせるものは微塵もなく、クウェートシティと郊外に電力と水道水を供給することで経済発展を支える主要インフラの1つであり、言わばクウェートの平和と発展の象徴とも言える存在になっています。
タワーを間近で見ると、モスクと同じで、人が登れる球部分の色使いや模様がいかにもイスラム世界の装飾らしいことが見て取れます。
タワー付近は、発展を続けるクウェートらしく、高層ビル群が林立しています。
家族連れで祝日を楽しむクウェートシティの人たち
私がクウェートタワーを訪れたのは元旦でした。イスラム暦を採用するクウェートでも祝日だったこともあり、このクウェートタワーとすぐ傍の砂浜には、家族連れで来ている人が多数見られました。
写真を嫌う人が多いと言われるイスラム世界ですが、奥さんや娘さんの写真を撮っているお父さんもいます。まあ、家族なので血のつながりのない他人の写真を撮るのに比べれば抵抗がないということかもしれません。
訪れる人たちの服装は現代の服装から伝統的なイスラムの服装までバリエーションに富んでおり、特に女性たちは全身黒ずくめのアバーヤからカラフルなサリーまで本当に様々で、戒律の厳しいイスラム世界において、良い意味で穏健なクウェートらしい気がしました。
サッカーに興じるティーンエイジャーの少年たち
家族連れが多いせいもあり、海岸で元気に遊ぶ子供たちの姿も目立ちます。以下の写真はサッカーに興じるティーンエイジャーの少年たちです。
若年層の割合が日本や欧米に比べて多く、生存競争が厳しいアラブ世界では、15歳を過ぎていると思えるこの子たちが大人とみなされていることは間違いありません。それでもサッカーに興じる彼らの無邪気な表情を見ると、この子たちもまだまだ子供だなあとしみじみと感じました。
野球に興じる小学校低学年くらいの少年たち
大人とみなされる少年たちがサッカーに興じるすぐ傍では、アラブ世界でもまだまだ子供とみなされている、小学校低学年くらいの少年たちが野球に興じています。
野球に興じる少年たちの傍らには、にこやかに彼らを見守るお母さんやお父さんがいます。家族の仲の良さが感じられて、とても微笑ましい光景です。
ちなみに、後ろにある建物は海鮮料理店。中華料理やタイ料理、和食もあり、多少高価ではありますがなかなか美味しいです。
サッカーに興じる少年たちも野球に興じる少年たちも、例外なくみんなイスラム式の帽子を被っているところもまた湾岸アラブ諸国のクウェートらしいです。
赤い服を着たバッターの少年と、キャッチャーやレフェリーの少年たち。赤い服の少年はどことなく大人しそうで少女みたいに見えますが、バットを持つまなざしは真剣そのものです。
2回空振りをするものの、3回目はボールを打ち、二塁まで走ってギリギリセーフ。彼だけでなく、皆とても楽しそうです。子供たちが楽しそうに遊んでいる姿は、どんな文化を持つ国であれ、とても微笑ましくて良いものです。
海岸でゴミ拾い活動に従事する少女たちとお母さんたち
一方、少女たちは、海岸でお母さんたちと一緒にゴミ拾いをしていました。
イスラム世界では女性の写真を撮ってはいけないとよく言われ、クウェートも例外ではありませんが、カメラを向けると嬉しそうにニコニコして手を振ってくれて、快く写真を撮らせてくれました。私のような外国人がいるのがとても珍しかったのかもしれません。
少年たちが野球やサッカーに興じる一方で、女性たちがゴミ拾いをしているというのは、もしかしたら男尊女卑傾向の強いイスラム世界の負の一面なのかもしれませんが、その一方で、お母さんたちや少女たちが海岸でゴミ拾いをしている姿が、和気あいあいととても楽しそうで、生き生きとしているのが印象的で、良い意味でのクウェートの今を垣間見ることができた気がしました。
高さ120mの回転展望台からクウェートシティを一望できる!
さて、3本のタワーのうち、2つ球がある120mの高さのタワーの上層球は回転展望台となっていて、クウェートシティを360度一望できます。
以下、タワーから見たクウェートシティの写真です。
高層ビル群が立ち並び、かなり発展していることが見て取れます。この発展ぶりの光景は、この国がかつて湾岸戦争でイラクに侵略され、5000人を超える犠牲者を出したことなど、全く感じさせないほどでした。
タワー直下の別の場所、先ほどの海岸とはタワーから見て反対の場所には、遊園地があります。ただ、冬なのでプールは使えず、入園者も全く見えません。どうやら元旦でお休みらしいです。
恐怖政治にも無差別テロにも汚染されていない平和なクウェート
湾岸アラブ諸国全般に言えることですが、立憲君主制と国民議会の国ではあるもののまだまだ首長には絶対君主的な側面が強く、過去にはクウェートでも民主化要求デモが弾圧されたこともあり、王家の統治も決して万全というわけではありません。
確かにクウェートでは、政治的・経済的にまだまだ様々な課題はありますが、その一方でこの海岸で憩う人々に生き生きとした表情が見られるのは、湾岸戦争が終結してサダム・フセインもイラク軍もいなくなったからであり、現在のクウェートがサダム・フセインような恐怖政治にも、アルカイダやイスラム国のような無差別テロにも汚染されていないからであることは間違いありません。
平和であることこそがクウェートの最大の魅力なので、この魅力だけはこれからもずっと守り続けていってほしいものです。
クウェートタワーの各種情報
入場料
タワー内の回転展望台に入場するのにKD3必要。また、クウェートシティの市内中心部から少し離れており、タクシーでアクセスするとKD3~4程度のタクシー代が必要になります。
開園時間
9時から23時半まで。無休。
アクセス
クウェートシティ中心部からタクシーで大体5~6分ほどかかります。タクシー代は片道でKD3~4程度。
周辺地図
(参考に)クウェートの各種情報
航空券
日本からの直行便はありません。東京(羽田or成田)からだとアブダビ、ドバイ、ドーハ、イスタンブール等の経由便があり、乗継地までは約12時間、そこからクウェートまで1~2時間程度の移動となるため、乗継の待ち時間を含めて約20時間かかります。
航空会社はカタール航空、エミレーツ航空、エティハド航空、ターキッシュエアラインズなど。
航空運賃は12万円~14万円が目安ですが、GW休暇や盆休みなどの連休や、航空会社の時間帯によって航空運賃が18万円近くまで跳ね上がることもあるのでご注意。
詳しくは、HISやスカイチケット、エクスペディアなどで航空券の検索を。
海外旅行はエイチ・アイ・エス
空港でのビザ取得
3か月間有効の滞在ビザが、入国時に空港で取得できます。費用はKD3。クレジットカードでの支払いはできません。到着ロビーのカウンター付近の銀行でKDに両替した後、申請用紙に名前などの必要事項を記入します。
ビザ取得用の印紙を自身で自販機で購入し、すぐ傍にあるコピー機でパスポートの顔写真入りのページをコピーして、必要事項を記入した申請用紙およびパスポートの原本と共に、カウンターに提出してビザを取得します。申請時には、パスポートに見開き2ページ以上余白が残っていることが必要になります。
なお、KDの現金がなければ自販機で印紙を購入できないため、入国時にはカウンターのすぐ近くにある空港銀行で両替してもらう必要があります。その際の注意事項については、本ページ下部の「クウェート滞在時の諸注意」に関する関連記事をご参照ください。
言語
公用語はアラビア語ですが、英語の通用度は非常に高く、バスやタクシー、レストラン、博物館でも普通に英語が通じます。交通標識や案内掲示板などにもアラビア語と英語が必ず併記されているため、英語が話せれば不自由に感じることはありません。
通貨
通貨単位はクウェート・ディナールとフィルス。現地表記はKDおよびFils。KD1が1000Filsおよび約370円程度に相当します。
時差
日本よりマイナス6時間。
宿泊施設
クウェートにはゲストハウスやエコノミーホテルのように安価な宿泊施設はありません。宿泊施設はビジネスホテルのレベルのものからで、最低でも7000円/泊はかかります。
その一方で、物価が高いクウェートシティ中心部でも10000円/泊未満で宿泊できるビジネスホテルは多数あり、そこそこ設備も整っていて周囲の騒音もさほどないため、わざわざ高級ホテルに宿泊する必要はありません。
ホテルの条件(Wi-Fi、冷蔵庫、エアコン、目的地へのアクセス、朝食の有無等)をよくご確認ください。特に、クウェートは常夏の国で、冬でも最低温度が25℃にはなるため、エアコンと冷蔵庫は必須と言えます。観光地としての知名度があまり高くない国なので、夏季や冬季の長期休暇でもそれ以外の日程でも、宿泊費はそれほど大きくは変わりません。
詳しくはエクスペディアやBooking.com、トリップアドバイザー等で検索を。
リアルタイム空室確認が分かりやすい!エクスペディアの海外ホテル
海外ホテル検索、Booking.com
TripAdvisor (トリップアドバイザー)
関連記事
クウェート滞在時の各種諸注意
イスラム教国であるクウェートでは、欧米や東南アジアなどに比べるとイスラム教の戒律故の様々な制約があります。王族やモスクでの礼拝、女性の旅、アルコールとたばこ、写真撮影など、クウェートでの滞在時における各種諸注意については、下記記事に詳しく記載してありますのでご参照ください。
湾岸アラブ諸国の近代都市の関連記事
石油の富を背景にして近代化を遂げつつ、石油の発見以前からのイスラム伝統文化も混在させている湾岸アラブ諸国の都市の光景に関しては、下記記事を併せてご参照ください。
- 湾岸アラブの近代化と伝統文化が混在する世界―クウェートの大型ショッピングモールと魚市場とダウ船から読み解く
- 湾岸アラブの近代化と伝統文化が混在する世界―クウェートの高層ビル群とモスクから読み解く
- 湾岸アラブの近代化と伝統文化が混在する世界―バーレーンの高層ビル群と旧市街の市場通りから読み解く
湾岸戦争に関わる見所の関連記事
クウェートが湾岸戦争時にイラクの侵攻で受けた破壊の爪痕や、破壊されつつも現在は見事に復旧され人々の憩いの場になっている見所については、下記記事をご参照ください。
湾岸アラブと石油の歴史の関連記事
それぞれの湾岸アラブ諸国で石油がいつ頃、当時のどのような社会事情を背景にして発見されたのか、石油の発見にはどのような人物や会社が関わったのかの歴史考察については、下記記事を併せてご参照ください。
湾岸戦争の歴史的経緯の関連記事
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- 湾岸戦争の歴史考察―米国主導の多国籍軍の介入で10万人のイラク人が犠牲に
- 湾岸戦争の歴史考察―イラクのクウェート侵攻と戦前日本の太平洋戦争の類似点
- 湾岸戦争の歴史考察―なぜクウェートはイラクの恨みを買ったのか